【超入門】第二回:グローバル社会を生き抜くための世界一平たい経営学~組織戦略/組織論とは?~

  • URLをコピーしました!

世界は恐ろしい速度で変化し、グローバル化の波は広がり続けています。
日本は高度成長期後のバブル崩壊から、失われた30年と呼ばれる経済停滞の状況が続いています。
更に人口減少からの超高齢化社会が進み、今後の日本経済の先行きを不安視する声が多い状況です。

人生100年時代と言われる昨今、終身雇用制は終わりを迎え、副業や週末起業など、自身のスキルや強みを活かして収入の柱を増やそうと努力されている方も多いと思います。
また、日本の市場や経済が今後も停滞が予測される中、私たち日本人も、個人や企業として海外進出や、海外に市場を開拓する必要性がますます増しています。

ではこのような状況下で、どのような知識やスキルを身につければよいのか?
その答えは英語、論理的思考、そして今回のブログテーマである経営学です。

世界の約17億人が使用する英語を習得することで、確実に世界が広がります。
私も思春期を超絶英語嫌いで過ごし、社会人になってから英語を学んだことで、海外勤務や移住など、人生が大きく変わりました。

論理的思考は、私たちの人生の羅針盤の役割を果たします。
高度成長時代とは違い、現代は答えのない世界です。
答えのない世界から、自身で考え、答えを導いてくれる思考法が論理的思考です。
私も米国での状況のつかめない環境下で、公私ともに論理的思考は多くの課題解決のヒントを与えてくれました。

そして最後の経営学は、ビジネスにおいてのレシピの役割を果たしてくれます。
経営学は過去の英知が詰まった総合科学です。
ビジネスの共通言語である経営学を学ぶことで、副業の運営や起業、海外で働くことになっても、その共通言語でビジネスをすることが可能になります。
経営学を知らずにビジネスをおこなう事は、料理のレシピを知らずに料理をすることと同じなのです。

まさに英語、論理的思考、経営学は、先行き不透明な日本の状況下で、グローバル社会を生き抜くための必須スキル・知識だと言えます。

経営学ってなんだか難しそう・・・と不安を持たれている方も多いと思います。

今回は経営学の概要が理解できるように、経営資源と言われるヒトモノカネを、組織戦略/組織論(ヒト)、戦略/マーケティング(モノ)、カネ(会計/財務)に分け、現代に必要不可欠な論理的思考も併せて全8回に分けて、食産業で管理職15年、海外法人代表5年を経験し、社会人になって経営学を学び直した著者が、知識と実務経験に基づいて経営学を世界一平たくご紹介させて頂きます。

第一回では経営学の概要についてご説明させて頂きました。
本ブログ第二回では、経営学の中から組織戦略/組織論(ヒト)についてご紹介させて頂きます。
このブログを10分、15分お読み頂くだけで、例えば飲食店などで、チームに主体性を持たせるためにはどうしたらいいんだろう?スタッフさんがすぐにやめてしまうんだけどどうすればいいなだろう?など、ヒトに関する事業経営の問題解決のヒントが盛りだくさんとなっていますので、最後までお読み頂けると幸いです。

目次

結論

経営学における組織戦略/組織論を平たく言うと、組織が共通の目的を達成するために組織編成を最適化し、動機づけしながら組織で共通の目的を達成することです。
更に端的言うと組織づくりです。

飲食店、小売店運営、チームでの副業や企業経営の悩みの多くはヒトに付随するものだと言います。
総合科学である経営学の組織戦略/組織論を知ることで、これらヒトに付随する問題解決の糸口をつかめるようになりますので、順番に理解を深めていきましょう!

経営学における組織戦略/組織論は平たく言うと、組織が共通の目的を達成するために組織編成を最適化し、動機づけしながら組織で共通の目的を達成することです。

組織戦略/組織論(ヒト)とは?

6人でラフティングをしている画像

組織戦略/組織論(ヒト)とは組織づくり

第一回の振り返りと、初めてこのブログを読んでくださっている方のために、「組織」と「共通の目的」について少しお話させてください。
私たちが普段呼んでいる「組織」とは、共通の目的を持ち、それを達成しようとする意志を持った2人以上の人の集まりと定義されています。
この組織が組織として成立するためには、必ず「共通の目的」としてミッション(目的)が必要です。
この「共通の目的」がない組織は、ただの人の集まりである集団と定義され、組織とは呼べないのです。
皆さんも「企業理念」のような言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか?この企業理念がミッションであり、組織にとって「共通の目的」となります。
ちなみに、ミッション(目的)を達成するために組織に方向性を示したものがビジョン(目標)で、外食産業であれば5年以内に100店舗出店!や10年以内にグローバル売上構成比50%へ!のようなものがビジョン(目標)となります。

組織戦略/組織論とは共通の目的を達成するために組織編成を最適化し、動機づけしながら組織で共通の目的を達成することでした。
つまり組織戦略/組織論を具体的に言うと、共通の目的であるミッション(目的)やビジョン(目標/ゴール)を達成するために組織設計をおこない、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなうという事なのです。

一見すると組織戦略/組織論って何だか難しそうだな・・・と思われるかもしれませんが、実は例えば飲食店や小売店を運営・経営されている皆さんは、既に基本的な組織戦略/組織論を実行されているのです。

例えば、50席の居酒屋があるとします。
従業員をホール2人、キッチン3人で営業しつつ、料理長1人含めて15人程は採用が必要だな、各ポジションの役割は○○で、時給や給与はこれくらいにしようなどは組織設計にあたります。
その後実際に人材を採用し、営業に向けて育成をしつつ、人材を予定していたポジションに配置し、実際に営業を続けていく中で、例えば年に1度評価をおこなって昇格や降格、ポジションの変更などをおこなえば、この一連の流れが基本的に組織戦略/組織論となります。
規模の大きな飲食店や小売店、他業種、企業であっても、基本的な組織戦略/組織論の構造は、組織設計、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけで成り立っているのです。

それではもう少し理解を深めるために、この組織設計と、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけについて深堀してみましょう!

  • 「組織」とは、共通の目的を持ち、それを達成しようとする意志を持った2人以上の人の集まり
  • 「組織」には必ずミッション(目的)やビジョン(目標)が必要
  • 組織戦略/組織論を具体的に言うと、共通の目的であるミッション(目的)やビジョン(目標/ゴール)を達成するために組織設計をおこない、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなうという事

組織設計と人材マネジメントとは?

ミーティング

組織設計とは?

組織設計と聞くと難しそうに聞こえますが、そんなことはありません。
例えばサッカーの試合に出場する目的のために、選手を11人揃え、11人にポジションを振り分けることも組織として目的を達成するための立派な組織設計です。
つまり飲食店や小売店、その他企業などの事業目的(共通の目的/ミッション)を達成するために、どのような組織の形、役割、権限や給与などを設計すれば目的を達成できるかを考え、計画し、実行する事が組織設計というわけです。
飲食店や小売店運営、チームでの副業や事業の経営をされている皆さんは、既に組織の目的に沿って組織設計をおこなっているとお話しさせて頂いたのはこのような背景があるためです。

今回は組織設計の役割や権限、給与などの設計に関する事には触れず、まず大枠の組織の形を設計するための代表的な3つの組織形態をご紹介させて頂きます。

組織設計3つの組織形態が書かれた図

組織設計をするための代表的な組織形態は、機能別組織、事業部別組織、マトリックス組織の3つがあります。
どの組織形態が適しているかは、組織として達成したい目的や、組織や事業、企業の規模やそれらを取り巻く内的、外的環境によって変化します。
また、それぞれの組織形態には、一般的にメリットとデメリットがあると言われています。

機能別組織とは?

機能別組織は、社長さんなどをトップに、機能別に組織を分けたもので、部署別と考えるとイメージが湧きやすいかもしれません。
一般的な企業や、飲食店、小売店などではこの機能別組織が採用されている場合が多いと思います。
例えば、1つの飲食店があったとして、店長さんをトップに、大きくキッチンとホールに分け、そこからキッチンはサラダ場、焼き場、揚げ場、ドリンカーなど、ホールは受け付け、レジ、接客担当などに分けていくのも、この機能別組織にあたります。

機能別組織のメリットは、一つの業務や職域に特化して仕事を行うため、その仕事内容に対するスキルや知識が熟練しやすく専門性が進み、生産性の向上につながる点です。
特に事業の規模が大きくなると、規模の経済の原理が働き、更に専門性が生産性の向上につながる特性があります。

デメリットは、社長さんや店長さんが大きな意思決定をする時に時間を要する傾向にある点です。
組織の形状上、トップに権限が集中しやすい構造になっているため、トップとしては、各部署からの情報を収集し、取りまとめ、適切な経営判断をする必要が生じてきます。
規模が小さいうちは良いのですが、規模が大きくなると、専門性と規模が大きくなることで、情報収集も深く広くおこなう必要があります。
その意思決定に時間を要してしまうため、経営を取り巻く環境変化に対応できず、ビジネスチャンスも逃してしまう可能性もあります。

皆さんも「何故会社はこんなに意思決定に時間がかかるんだろう??」と思われたことも多いのではないかと思います。
この現象は皆さんの会社だけでなく、一般的にこの機能別組織のデメリット部分が表面化したという事になります。
この問題を解決するためには、トップへの情報伝達の効率化と、トップが幅広く深い情報を効率的に精査し、意思決定につなげることができるスキルセットが必要だと言われています。

事業部別組織とは?

事業部別組織とは、事業別に権限を委譲し、事業の最初から最後までその事業担当者が一貫して対応する組織形態です。
事業別に組織を分けることになりますので、主に中規模や大規模の企業で採用されています。
外食産業でいうと、複数の業態があり、社長さんをトップに、和風居酒屋事業、イタリアン事業、カフェ事業などの業態別にトップを添えて、事業を管理するようなイメージです。

事業部別組織のメリットは、各部署にトップを添え、権限の委譲と責任の所在を明確にすることで、意思決定が効率的におこなえる点です。
機能別組織のデメリットであった、トップの意思決定に時間がかかる点も、この事業部組織のメリットでカバーできます。
事業部別にトップを添えることで、社長さんは大局を見ながら会社全体の意思決定に時間を割くことができるようになります。

デメリットとしては、事業別に権限を委譲し、独立した意思決定をおこなうことで、会社全体としてのシナジーが低下する可能性がある点です。
事業ごとの横のつながりが薄くなり、互いが自身の事業部の利益を優先し、結果会社全体で見た時に、経営資源の使い方に無駄や非効率が発生する組織形態になってしまうという事です。

最近ニュースなどで企業の後継者問題などがクローズアップされる事も多いと思います。
この事業部別制は、各事業部ごとにトップを添え、権限を委譲し独自の意思決定をおこなう事によって、経営者育成がおこなえるという側面もあります。
このメリットを最大限活用するためにも、組織に共通の目的であるミッション(目的)やビジョン(目標)を明確に掲げ、
各事業部が私利私欲に走らないような企業文化をつくっていくことが重要となってきます。

マトリックス組織とは?

マトリックス組織とは、機能別組織と事業部別組織を交差させた組織形態です。
例えばとある飲食企業に運営部門、購買製造部門、オフィス部門の機能別組織があったとします。
この3つの機能別組織が、和風居酒屋事業、イタリアン事業、カフェ事業を担当するイメージです。

マトリックス組織のメリットは組織間のシナジーが高まり、組織として高い成果物が生み出せる点です。
機能別組織の専門性、生産性と、事業部別組織の意思決定の効率性を掛け合わせることで、より経営資源を有効活用し、チーム間の連携も深まり、組織間でのシナジーが向上することで、事業として高い成果物を生み出せる可能性があります。
特に、新商品の開発や、ゼロベースでの新規事業の立ち上げなど、プロジェクトベースでの組織編制に向いていると言われています。

マトリックス組織のデメリットは、メリットは非常に大きいですが、実行管理するための難易度が非常に高い点です。
組織形態が、機能別組織と事業部別組織を交差させたマス目状になっていることで、責任の所在、情報ルート、意思決定や業務管理などが複雑になる傾向にあります。
結果この複雑性が、社長さんの会社全体の意思決定に悪影響を及ぼす可能性もあるため、事業部レベルでのマトリックス組織の導入は慎重に検討する必要があります。
導入する際は、まずはプロジェクトベースでの導入から検討し、マトリックス組織のメリット面最大化を目標にすることをおすすめします。

  • 組織設計とは、飲食店や小売店、その他企業などの事業目的(共通の目的/ミッション)を達成するために、どのような組織の形、役割、権限や給与などを設計すれば目的を達成できるかを考え、計画し、実行する事
  • 機能別組織は、社長さんなどをトップに、機能別(部署別)に組織を分けた組織形態
  • 事業部別組織とは、事業別に権限を委譲し、事業の最初から最後までその事業担当者が一貫して対応する組織形態
  • マトリックス組織とは、機能別組織と事業部別組織を交差させた組織形態

人材マネジメントとは?

さて、組織戦略/組織論とな何かとおさらいすると、共通の目的であるミッション(目的)やビジョン(目標/ゴール)を達成するために組織設計をおこない、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなうという事でした。
前項では、組織設計についてお話させてい頂きましたが、本項では人材の採用、配置、育成、評価、動機づけについてお話させて頂きます。

改めてになりますが、人材マネジメントとは、組織の共通の目的であるミッション(目的)やビジョン(目標/ゴール)を達成するために、組織設計をおこなった後、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなう事です。

人材マネジメント(採用、配置、育成、評価、動機づけ)が書かれている図


組織設計と人材の採用に至るまでに、最近日本でも聞くことが多くなった職務記述書(ジョブディスクリプション)や、給与・福利厚生などの設定、目的や目標達成などに応じた研修制度の準備など、事前に準備しておく項目などもありますが、こちらについては別の機会でお話しさせて頂きたいと思います。

前途の通り、既に飲食店、小売店運営をされている店長さんや、チームでの副業や、自身の会社を経営をされている社長さんなどは、この人材マネジメントの大枠は既に日頃実行されていると思います。
その中で、チームが主体的に動いてくれない、チームに活気が足りない気がする、せっかく採用したのにすぐにスタッフさんが辞めてしまうなど、このような問題を抱えている店長さんや社長さんも多いのではないでしょうか?
この問題を解決するヒントが人材マネジメントのプロセスにあります。

多くの企業では、ある一定の目的や目標に応じて、組織設計や人材の採用、配置、育成はされていると思います。
経営学においての人材マネジメントのポイントは、組織共通の目的(ミッション)や目標(ビジョン/ゴール)を達成するために、人材マネジメントを繰り返しおこなう必要あるという点です。
つまり、一度やれば終わりではなく、目的や目標に応じて月単位や年単位で、人材マネジメントをサイクルとしてルーティン化することが重要になります。

更に、上記のような問題、組織を目的(ミッション)や目標(ビジョン/ゴール)に向けて動かし、主体性をもってもらいながら目的(ミッション)や目標(ビジョン/ゴール)を達成につながげるためには、人材マネジメントサイクルの中でも、評価や動機づけが非常に重要な項目となります。
それでは何故評価や動機づけが重要なのか?どのように組織を動かし、目的や目標を達成すればよいのか?について順に見ていきましょう。

  • 人材マネジメントとは、組織の共通の目的であるミッション(目的)やビジョン(目標/ゴール)を達成するために、組織設計をおこなった後、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなう事
  • 組織を目的(ミッション)や目標(ビジョン/ゴール)に向けて動かし、主体性をもってもらいながら目的(ミッション)や目標(ビジョン/ゴール)を達成につながげるためには、人材マネジメントサイクルの中でも、評価や動機づけが非常に重要

組織を動かすために何が必要か?

フットボールをしている選手の画像

組織が動かす要素と機能

チームが主体的に動いてくれない、チームに活気が足りない気がする、せっかく採用したのにすぐにスタッフさんが辞めてしまうなど、人を採用し、事業を運営しているとこのようなヒトに関する悩みを解決するヒントを経営学の組織戦略/組織論は私たちに与えてくれます。
前途の評価や動機づけは、経営学の中では動機づけ理論やリーダーシップ論などの学問として体系的にまとめられています。

まず初めに、動機付け理論とは、1950年代からアメリカで研究がはじまり、個人やチームが目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向けて動くための要因とは何か?を研究したものです。
この動機づけ理論を知ることで、チームにどのように働きかければ動機づけにつながり、自発的に目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向かって行動してくれるのか?のヒントを得ることができます。

またリーダーシップ論は、1900年代から研究が始まった学問で、組織が設定した目的(ミッション)や目標(ビジョン)を達成するために、リーダーがどのように組織を動かし、目的(ミッション)や目標(ビジョン)を達成するか?またその役割や手法を研究したものです。
リーダーシップ理論を知ることで、店長さんや社長さんなど、組織のリーダーとしての役割や、どのようにチームを目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向けて導き、達成することができるのかを体系立てて知ることができます。

このように、動機づけ理論やリーダーシップ論を活用することで、組織が目的(ミッション)や目標(ビジョン/ゴール)に向けて組織が主体的に動き、組織で目的や目標につながげることを実現できる可能性が高まるのです。

ビジネスの悩みの多くはヒトに関することに付随すると言いますが、経営学の組織戦略/組織論は、これら事業や企業経営おヒトに関する悩みを解決するヒントが盛りだくさんだという事です。
これらを事業や企業経営に活用するために、もう少し動機づけ理論やリーダーシップ論について掘り下げていきましょう!

  • 動機づけ理論を知ることで、チームにどのように働きかければ動機づけにつながり、自発的に目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向かって行動してくれるのか?のヒントを得ることができる。
  • リーダーシップ理論を知ることで、店長さんや社長さんなど、組織のリーダーとしての役割や、どのようにチームを目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向けて導き、達成することができるのかを体系立てて知ることができる。

動機づけ理論


動機づけ理論は、チームにどのように働きかければ動機づけにつながり、自発的に目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向かって行動してくれるのか?のヒントを得ることができるとお話しさせて頂きました。
今回は動機づけ理論の中でも有名なマズローの欲求階層説についてご紹介させて頂きます。

マズローの欲求階層説とは、アメリカの心理学者アブラハム・マズローが、1943 年に人間が動機づ
けられるもの、動機づけるものとして、人間の欲求を 5 段階の階層に分け、理論化したものです。
この5つに欲求がバランスよく満たされれば人間は動機づけられる=目的や目標に向かって動きだすという理論です。

5つの欲求の階層は以下の通りです。

マズローの欲求階層説の図

飲食店や小売店運営、企業経営などと照らし合わせてご説明すると以下の通りとなります。

  • 生理的欲求:人間が必要最低限生きるために必要な欲求で、食べ物や水、空気など。
  • 安全欲求は:保障や安全性に対する欲求で、給与や福利厚生、経営状態など。
  • 社会的欲求:社会や集団、組織内で所属意識に対する欲求で、職場環境や人間関係など。
  • 尊厳欲求:他人からの尊敬や承認を得たい欲求で、チームからの感謝の念や査定、昇格、昇給など。
  • 自己実現欲求:自己の目的や目標を達成したい欲求で、自身や組織での目的や目標の設定と達成など。

マズローの欲求階層説を飲食運営や経営で活かすためのポイントとしては、この5つの欲求を満たせる環境や仕組みをつくりつつ、組織としての目的(ミッション)や目標(ビジョン)を明確にして、自己実現欲求を満たすことができる環境をつくる事です。

給与や福利厚生、経営状態を安定させたり、職場環境や人間関係を整え、昇格や昇給などの評価制度を整えてあげることも勿論必要なのですが、これらは外発的欲求で、満たされてしまうと欲求=動機が減少する傾向にあります。
他方で、自己実現欲求は、一度欲求が満たされても、更に自己実現欲求が増加するという性質があります。
これら外発的欲求と内発的欲求の特性を理解した上で、外発的欲求の環境や仕組みを整えつつ、組織として達成すべき目的(ミッション)や目標(ビジョン)を掲げるだけでなく、各個人に対しても月単位や年単位でゴール設定をしてあげることが動機づけにつながり、個人や組織が自発的に組織として達成すべき目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向かって動き出す要因となるのです。

組織全体に達成すべき目的(ミッション)や目標(ビジョン)を浸透させ、このマズローの欲求階層説を活用して、給与や福利厚生、昇格や昇給などの外発的欲求の環境や仕組みの整備だけでなく、是非各個人にあったゴール設定をしてあげてみてください。
チームが面白いくらいに目的や目標に向かって、自発的に動いてくれることを体験できるだけでなく、チームが主体的に動いてくれない、チームに活気が足りない気がする、せっかく採用したのにすぐにスタッフさんが辞めてしまうなどの問題解決にもつながるはずです!

リーダーシップ論

動機づけ理論の一つ、マズローの欲求階層説をご紹介させて頂き、どのように私たち人間は動機づけられ、目的や目標に向かって動きだすのか?についてご紹介させて頂きました。
組織戦略/組織論の最後に、組織を目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向けて導き、達成するためのリーダーの役割やその手法がまとめられたリーダーシップ理論についてご紹介させて頂きます。

まず私たちはリーダーという言葉をよく耳にすると思いますが、リーダーの役割はリーダーシップ理論の中で「組織に共通の目的を示し、組織に達成しようとする意志を持たせ、組織で共通の目的を達成すること」と言われています。
つまり、組織戦略/組織論を平たくご説明させて頂いた、組織が共通の目的を達成するために組織編成を最適化し、動機づけしながら組織で共通の目的を達成することを実際に実行する役割を担っている人物がリーダーという事です。
例えば飲食店や小売店であれば店長さん、自身で副業をされていたり、事業を経営されているオーナーさんなどがこのリーダーにあたります。

ではこのリーダーがどのように「組織に共通の目的を示し、組織に達成しようとする意志を持たせ、組織で共通の目的を達成すること」を実行すればよいのか?
数あるリーダーシップ論の中から、こちらも有名なリーダーシップの6つの型を理論化した、ダニエル・ゴールマンのリーダーシップ論をご紹介させて頂きます。

ダニエル・ゴールマンの6つのリーダーシップ論の6つの型は以下の通りです。

❶強圧的リーダーシップ
緊急時に明確な方向性を示し、恐怖を鎮め、命令に従う事を要求し、裁量権を 1 人で握る。
全ての状況を監視、支配し、理由は説明しない。長所は、災害時など、危機的状況を脱する時は有
効だが、短所は、組織がモラール、自尊心、モチベーション、帰属意識、愛着を失い、組織文化の
衰退、崩壊へ繋がる。

❷先導型リーダーシップ
難易度が高く、やりがいのある目標の達成をめざし、リーダーが高レベルのパフォーマンスを目指し
手本を見せる、メンバーの失敗はリーダーが状況改善を行う。長所は、非常に優秀な組織であれば
高い成果を上げることができるが、短所は、優秀なリーダーに依存するため、組織への思いやりの
欠如や、結果重視のため組織の不安が大きくなり、組織のモラールが低下する。

❸コーチ型リーダーシップ
1対1の対話が非常に重要視し、個々人の希望を組織の目標に結びつけ、モチベーションの高い組
織に効果的とされる。長所は、組織のチームメンバー1 人 1 人の夢やアイデンティティと仕事をつ
なげ、モチベーションを保ち、目標達成に近づける。短所は、メンバーを個人的に深く理解してい
ないと発揮できず、モチベーションが低いメンバーには効果がなく、リーダー側に部下を指導する
だけの専門知識や思いやりが備わっていないと効果がない。

❹民主主義型リーダーシップ
情報を開示し、提案を歓迎し、参加を通じてコミットメントを得る。また結果よりもプロセスを重
視し、結果を問わず、関係者全員に前向きのインパクトを与える。長所は、リーダーが決断できな
い時に最も有効で、アイデア発掘や実態把握に効果があるとされる。短所は、知識や能力不足のメ
ンバーからは何も得られず、結論が出にくく、緊急性には適していない。また、衝突が激化する可
能性が強いとされる。

❺親和型リーダーシップ
人々を互いに結びつけて、課題や目標達成より部下の感情面のニーズを重視し、自分の感情を周囲
と共有する(周囲に合わせる)型。長所は、組織の融和やモラールを高め、意思の疎通を改善に効
果的で、壊れた信頼関係を修復したいときに効果であるとされる。短所は、メンバーの気持ちばか
りが重視されて、目標や目的が後回しになってしまい、多用すると改善や能力向上のためのフィー
ドバックが消極的になり、対立を避ける組織になる。

❻権威主義型リーダーシップ
共通の夢に向かって人々を動かす最も前向きなリーダーシップの型で、夢を語るが到達までの方法
を押し付けず、方法はメンバー達の自主性に任せる。長所として、組織への帰属意識が高まり、6
つのリーダーシップの型のうち、総合的に見て最も有効な型とされている。短所は、他のメンバー
の方が専門知識や経験で優れている場合は、リーダーが壮大なビジョンを説明しても大げさで時代
遅れに聞こえてしまう。また、リーダーが強圧的な態度を取ると、チームの平等精神が崩壊すると
される。

この6つのリーダーシップの型は、それぞれメリットとデメリットが存在し、組織を取り巻く環境や組織状態によって使い分けが必要とされています。
とはいうものの、日頃飲食店や小売店運営、企業経営で忙しい店長さんや社長さんにとって、6つの型を状況の合わせて使い分けることは現実的ではないと思います。
私自身もこの6つの型を知った時は、結局どれを活用すればいいの?と悩んだ記憶がありあます。

6つのリーダーシップの中でも、現代の経営環境に合致したリーダーシップの型は、権威主義型リーダーシップです。
権威主義型リーダーシップはビジョン型リーダーシップとも呼ばれています。
何故権威主義型リーダーシップが現代の経営環境に合致している理由の一つが、従業員の皆さんの仕事観の変化です。

労働者1万人を対象としたポストコロナ過の仕事観に関するアンケート調査で、特にZ世代の約7割が社会貢献でき、持続可能性ある会社で働きたい」と回答しています。
また近年米国企業においても、株主至上主義から顧客や従業員、サプライヤー、地域社会、株主などすべてのステークホルダーを重視する方針への動きが加速しています。
つまり、事業や企業がなぜその事業活動をしているのか?これまでお話しさせて頂いたミッション(目的)/企業の存在意義が非常に重要で、従業員や社会から共感を得れるものである必要があるのです。

では、リーダーとして権威主義型リーダーシップを実行するために何をおこなうべきなのか?
その答えは組織戦略/組織論そのものだという事です。
つまり、組織の共通の目的あるミッション(目的)やビョン(目標/ゴール)を達成するために組織設計をおこない、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなうという事が、現代のリーダーとしての役割、リーダーシップであるという事なのです。

まとめ

ここまでお読みいただきありがとうございます。
本ブログ最後のまとめでは、これまでお話しさせて頂いた組織戦略/組織論の要点を振り返りをさせて頂き、理解を深めて頂ければと思います。

まず経営学における組織戦略/組織論を平たく言うと以下の通りでした。

組織が共通の目的を達成するために組織編成を最適化し、動機づけしながら組織で共通の目的を達成すること

その中で、私たちが普段所属している組織とはそもそも何なのかは以下の通りです。

  • 「組織」とは、共通の目的を持ち、それを達成しようとする意志を持った2人以上の人の集まり
  • 「組織」には必ずミッション(目的)やビジョン(目標)が必要

その組織とって組織戦略/組織論を具体的に表現すると以下の通りです。

組織戦略/組織論を具体的に言うと、共通の目的であるミッション(目的)やビジョン(目標/ゴール)を達成するために組織設計をおこない、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなうという事

上記の組織設計と、3つの代表的な組織形態は以下の通りでした。

  • 組織設計とは、飲食店や小売店、その他企業などの事業目的(共通の目的/ミッション)を達成するために、どのような組織の形、役割、権限や給与などを設計すれば目的を達成できるかを考え、計画し、実行する事
  • 機能別組織は、社長さんなどをトップに、機能別(部署別)に組織を分けた組織形態
  • 事業部別組織とは、事業別に権限を委譲し、事業の最初から最後までその事業担当者が一貫して対応する組織形態
  • マトリックス組織とは、機能別組織と事業部別組織を交差させた組織形態

組織設計後におこなう人材マネジメントとは何か?をまとめると以下の通りとなります。

  • 人材マネジメントとは、組織の共通の目的であるミッション(目的)やビジョン(目標/ゴール)を達成するために、組織設計をおこなった後、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなう事
  • 組織を目的(ミッション)や目標(ビジョン/ゴール)に向けて動かし、主体性をもってもらいながら目的(ミッション)や目標(ビジョン/ゴール)を達成につながげるためには、人材マネジメントサイクルの中でも、評価や動機づけが非常に重要

人材マネジメントの中でも、組織を動かし、目的達成を実現するために必要な動機づけ理論とリーダーシップ論とは以下の通りでした。

  • 動機づけ理論を知ることで、チームにどのように働きかければ動機づけにつながり、自発的に目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向かって行動してくれるのか?のヒントを得ることができる。
  • マズローの欲求階層説を活用し、5つの欲求がバランスよく満たされれば人間は動機づけられる=目的や目標に向かって動きだす
  • リーダーシップ理論を知ることで、店長さんや社長さんなど、組織のリーダーとしての役割や、どのようにチームを目的(ミッション)や目標(ビジョン)に向けて導き、達成することができるのかを体系立てて知ることができる。
  • 現代のリーダーとしての役割、リーダーシップとは、組織の共通の目的あるミッション(目的)やビョン(目標/ゴール)を達成するために組織設計をおこない、人材の採用、配置、育成、評価、動機づけをおこなうという事

いかがだったでしょうか?【超入門】第二回:グローバル社会を生き抜くのための世界一平たい経営学では、組織戦略/組織論についてご紹介させて頂きました。
ビジネスの課題の多くはヒトに付随するもので、今回ご紹介させて頂きました経営学の組織戦略/組織論が、これらの課題解決の糸口に繋がることに貢献ができれば嬉しく思います。

コロナ以降、世の中の従業員の皆さんの仕事観だけでなく、企業の存在意義であるミッション(企業理念)も、社会に貢献できる内容であることが重要視されてきています。
組織には必ず共通の目的であるミッション(目的/企業理念)が必要で、リーダーの役割はこのミッションやビジョン(目標/ゴール)を組織に示し、共感を得ることが、組織戦略/組織論の重要な第一歩となります。
是非皆さんも、リーダーとしてチームがワクワクするミッションやビジョンを示し、それに合わせた組織設計や人材マネジメントサイクルを活用し、チームが主体的にゴールを達成してくれるような組織づくりをおこなって頂ければと思います!

第三回では、経営学の戦略/マーケティングの戦略について世界一平たくご紹介させて頂いておりますので、ご興味がある方はお読み頂けると幸いです。

このブログをお読みの皆さんの中で、もっと経営学を本格的に学びたい!と思ってくださった方に、携帯やパソコンで動画カリキュラムを通じて手軽にオンラインで経営学を学ぶことができるグロービズ学び放題を下記にご紹介させて頂きます。

更に本格的に経営学を学びたいと思ってくださった方用に、私が実際社会人になってから再度経営学を学び、私の人生を大きく変えるきっかけを与えてくれた、ビジネス・ブレークスルー大学を下記にご紹介させて頂きます。
是非興味のある方はチェックしてみてください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次